2020S 立法・行政1
2020-04-29
この日の授業の進め方については、下記の本日の筋書きをご覧ください。
4月29日は祝日ですが、駒場の学事暦では通常の授業日となっているので、普通に授業をします。
次回は5月13日です。
「オンライン授業と著作権法」のQ&A
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予習資料
4/29の授業の前に目を通していただきたいもの(白石、井上)
白石忠志「『オンライン授業と著作権法』を理解するための前提」
少なくとも、4頁目の新旧対照条文は、授業中にかなり読み込みます。
井上由里子「教育ICT化推進と著作権の権利制限――著作権法35条改正について」Law and Technology 81号(2018年)
ITC-LMSで配布。
道垣内弘人先生の方法(道垣内弘人プレップ第2版)で、次の点を中心に、改正前後の流れを簡単につかんでおくだけで構いません。 3〜5頁(見出し5と6)
7〜8頁(見出し8(2)と9)
以上の2つの資料について、よくわからなかったところがあれば、知らせてください(SlackでOK)。これは課題ではありません。事前に知らせていただけると助かる、ということです。28日(火)12:30くらいまでなら、さらに助かります。
上記以外も含めた資料。見なくても結構です。参考程度。
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本日の筋書き
8:30から、Mixlrを使って始めます。
ツイキャスではありません。
ブラウザで聴けます。アカウント作成不要。
右向き三角が出たら、押してください。開始時刻になっても三角が出ない場合、再読み込みしてみてください。
本日の目標
背景や前提を大まかにつかんで、条文を読んでみる。
具体的には
法律を改正してルールを変える際の進め方を具体例で概観
どのような資料があるのか
内容のつかみ方を具体例で体感
「条文」で確認・・一次資料の重要性
以上の過程で、様々なコツ・実態・考え方に触れる。
一次資料とは
もともとのもの。何かのときに依拠されるべき資料。
○○法の改正について、次のいずれが一次資料に当たりますか?
○○法の条文、一部改正法の条文、新旧対照表
担当官庁が作成したパワポ資料
担当官庁の法案作成担当者が書いた解説書
政府広報
マスメディアの記事
ネット上で誰かがまとめた記事
ご紹介
具体的な勉強の進め方の指針になるような、落ち着いた表現の、薄い本。1000円+税。
法学部で契約している有料の判例データベースなど、使えることがわかりました。
誰でも使えるネット上の資料だけでも十分に豊富。
どれが信用でき、まず参照すべきか。
授業で少しずつ伝えていく。
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ルールの変え方(変わり方)・・法律の場合
次の図の左上のような流れ
(前回見た動画から切り取ったもの)
閣法が多い → 「官僚が法律を作る」
https://gyazo.com/c0ae5d258d65bb2f229b024d138a20b4
「権利制限」
わかりにくい言葉
今回の著作権法改正の経緯・背景
井上解説
著者はどのような立場でこの解説を書いているのか
・・こういったところから確認して読んでいくのが「リテラシー」
報告書(最終版)が出ている回のページ
改正の概要
文化庁の説明資料
説明資料そのもの
著作権の及ぶ範囲に関する部分(改正後の35条)
上記資料3頁
https://gyazo.com/f02b32b06da7ad1ad5c71e040d345a19
補償金制度に関する部分(改正後の114条の11)
上記資料5頁
条文の約束事(最小限バージョン)
さっと見るだけ。
大学では、これに沿っていないから試験で減点、とかいうことはないのだが、こういった約束事が存在する、ということ自体は、知っておくのが望ましい。
横書きの文章では、数字は算用数字で書いてよい。
「第」を付けるのが正式だが、略してもよい。
o「第23条第1項」(正式)
o「23条1項」(略式)
x「第23条1項」(正式と略式の混在)
枝番号が付いているものも付いていないものも全て同等。104条の11は104条の子分ではない。
枝番号には「第」を付けない。
x「第104条の第11」
o「第104条の11」(正式)
o 「104条の11」(略式)
「第」を略する場合も、枝番号の次に続くものがあるとき、そこにおいては略さない。数字と数字の間に仕切りを入れるための便法。
x「104条の11 1項」(仕切りが見えない)
x「104条の11の1項」(「の」は枝番号だけ)
o「104条の11第1項」(略式)
o「第104条の11第1項」(正式)
元号
Q
補償金の一人当たりの金額のイメージがわかないのですが、大体どれくらいになるものなのでしょうか。また、教育機関や学校ごとに補償金の額は異なっていくのでしょうか。
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(以下の中に複数回の休憩が入ると思う)
9:08
白石「前提」(2ページ分のみ)
説明文の一つの例
著作物
著作者の権利
例外(この授業に特に関係のあるもの)
13条
法学部では日常的
32条
アカデミックマナーとの異同
35条
登場人物を具体的に意識する
https://gyazo.com/028143b6acdcc237fd9f32b0c4c2057d
新旧の35条の読解(白石「前提」4頁)
改正前(新旧対照条文の下段)の35条
読解
Q
以下のQは、授業の記録のため消さずにおきますが、このページ末尾のQに合流させます。
講義映像や資料を教師側が学生に送信することが認められるようになったということだと私は受け取ったのですが、学生同士が意見共有のために授業に関わる資料などを共有することは無許可無償でして良いと認められているのでしょうか?
営利目的を除くとありますが、私立学校は営利に入るのでしょうか?
調べなくても、井上さんが審議会の委員だとわかる、とおっしゃっていましたが、それは井上さんの解説のどのような点を根拠に判断されるのでしょうか。
井上由里子さんの資料の最初のページにある法改正を待っていたのでは間に合わないということはどういうことですか?
利益を不当に害する、みたいな抽象的な内容の現実の問題に即した判断は、裁判所が行うものでしょうか。過去の判例に基づく判断なら、改正後初めての判断はどのようになされるのでしょうか
質問なのですが、例えば先生がオンライン授業を行う時、著作権は先生の授業なのだから先生にあるため、今回の改正に関係なく行うことができるということなのですか。それとも、先生の授業の内容は部分的に他者の著作権に関わる(今回では井上先生の資料など)ため、その部分は、今回の改正が適用されるということなのでしょうか。「著作権」が属する人(権利者)が誰になるかはどのように決まるのですか。また、この改正のおかげで今オンライン授業ができているという認識でよろしいのでしょうか。
今回の改正で権利制限が及ぶ範囲に、「予復習用の資料のメールでの配布」と書いてあるのが気になります。これは「メール」に限定された話なのでしょうか?ITCLMSのような形での資料の配布・共有に関しても、このうちに収まっているのでしょうか?
今回の改正で対面授業の予習資料の配布が権利制限の対象になるということは、4月28日以前に様々な授業でitc-lmsを用いて配られていた資料はなぜ配布できていたのでしょうか?これが改正附則4条にあたるのでしょうか?
指定管理団体に権利を委託していない権利者がいるのはどうしてですか?
今回の改正で、学校関係での公衆送信は(補償ありにした上で)広く認められることになりましたが、著作権者に許諾を得た場合は、その範囲内でより広く使用が認められるという認識でよいでしょうか?
関係資料に「ガイドライン」とあったが、ガイドライン自体にはどのような権威があるのか。裁判所の判例になっていないが、どれほどの効力があるのか。
著作権法第35条第1項で、改正によって「使用」という言葉が「利用」という言葉になっていましたが、これにはなにか意味があって変えられたのでしょうか?
先ほどお話ししていた「東京大学で契約しているデータベース等を学生が学外から利用する方法」ですが、私たちは、GACoSからSSL-VPNに入る方法を教えられています。さきほど確認したら先生が書いているURLからでも入れましたのでそちらの方が便利かもしれませんが一応お知らせしておきます。
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9:40
改正後(新旧対照条文の上段)の35条
読解
補償金制度
104条の11(白石「前提」3頁)
早期施行(4月28日)
SARTRAS(2019年2月に指定)
35条運用指針(「ガイドライン」)
施行されたので
e-Gov法令検索(改正反映済み。2020-04-29確認)
まとめの頭の体操
白石「前提」に条文を掲載しているのは、差し支えありませんか。
白石「前提」で文化庁作成の新旧対照条文を用いているのは、差し支えありませんか。
上記で文化庁作成の図をキャプチャして貼っているのは、差し支えありませんか。
井上由里子さんの解説を配布しているのは、差し支えありませんか。
井上由里子さんの解説をITC-LMSのみで配布したのは、なぜだと推測されますか。
SARTRASに参加していない権利者の著作物を授業で用いることはできますか。
井上由里子さんの解説は4月24日からITC-LMSで配布していますが、差し支えありませんか。
答えまたはヒント
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意見募集
連休明けから「法1」でもZoomを使うか、それとも現在の方法で行くか、について、自由に意見をいただければと思います。1ツイート〜3ツイートくらいでも十分です。Slackを使っているならSlackのDMで送ってください。4/29の授業終了後にお願いします。
学生が多数いますので、必ず意見は割れると思いますから、全員の考えるとおりにはならないことを、あらかじめご了承ください。
以下はご参考
白石としては、COVID-19前のリアル教室では、「説明しながらその場でiPadを用いて図解等を板書」をしてきたので、現在の方式ではそれができないのが少し残念です。その点は、Zoomを使えば解決します。
Zoomを使う場合、学生側のカメラ・マイクは、オフでよいです。氏名もニックネームでよいですけれども・・お任せします。
他方で、現在の方式も、音声だけという割り切り・気楽さはあると思っています。
Slackは、いずれにしても使い続けるつもりです。Zoomの教員宛てチャットがどのくらい機能するか、未知数です。また、Zoomでは、授業時間外にコメント等を届けることができません。
オンライン・オフィスアワーの希望なども、もしあったらお知らせください。行う場合、複数の学生とオンラインで会い、全員がカメラ・マイクをオン、となると想定しています。多くの学生が参加しやすい時間帯も教えてください。ただ、オンライン・オフィスアワーは特に、実現できるかどうかわかりません。時間的制約を含め。
「オフィスアワー」= 時間外に教員と学生が会って雑談する。雑談大事、という文化です。
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次回(2020S 立法・行政2)は、5月13日(水)です。詳細は未定ですが、少なくとも部分的には、「マスク転売規制」「チケット転売規制」に触れる予定です。 予習資料は、少なめ(条文数枚+α)とし、5月8日頃に知らせます。
Podcastの「ぱうぜトーク」に白石がゲスト出演しているので、次回の関係では特に、その第32回(白石忠志さんゲスト3/3)を聴いてみてください。第32回は4月30日配信予定とのこと。
第31回(白石忠志さんゲスト2/3)の内容は、取り上げるとしても6月頃の予定です。
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まとめの頭の体操(答えまたはヒント)
問題に番号を付ければよかったですね。次から気をつけます。
①白石「前提」に条文を掲載しているのは、差し支えありませんか。
13条1号
②白石「前提」で文化庁作成の新旧対照条文を用いているのは、差し支えありませんか。
13条2号でもよいかもしれないが、少なくとも32条2項
③上記で文化庁作成の図をキャプチャして貼っているのは、差し支えありませんか。
少なくとも32条2項
④井上由里子さんの解説を配布しているのは、差し支えありませんか。
⑤も含めて考えると、改正後の35条1項により「できる」と考えられる。
⑤井上由里子さんの解説をITC-LMSのみで配布したのは、なぜだと推測されますか。
ITC-LMSのみで配布するのでなければ、35条1項の「その必要と認められる限度」や「ただし書」の条件を満たさない可能性が高いから。
「授業を受ける者」のみに送っているから、という説明にもいくつか出会いました。本件は、それでいいのですが、「その必要と認められる限度」や「ただし書」の条件を満たすから、と説明するほうが、理由づけとして包括的でよいです。例えば、井上聡さんがゲストとなっている回で井上さんにも送信しても問題ないと考えられるので、「授業を受ける者」のみだからよい、と説明するより、「その必要と認められる限度」や「ただし書」の条件を満たすから、と説明するほうが、理由づけとして強靭となります。
⑥SARTRASに参加していない権利者の著作物を授業で用いることはできますか。
使ってよいかどうかは35条1項で書き切っており、権利者がSARTRASに参加しているか否か(権利者が補償金を受け取る体勢となっているか否か)は関係ないと考えられる。権利者の許諾は不要。35条2項で、補償金は払う(令和2年度は無償だが)。補償金の支払先は、104条の2第1項により、SARTRAS「1個」のみとされている。そのあとの話はSARTRASと権利者の間で解決してください(教育機関を設置する者は心配する必要がない)、という整理。上記からわかるように、35条1項を満たすことが大前提。
SARTRASのQ&Aに、これに関するものがあるとしても、まずは、条文から考えるのが、法律家のあるべき姿です。
⑦井上由里子さんの解説は4月24日からITC-LMSで配布していますが、差し支えありませんか。
(授業で説明したので省略。)
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Q&A
文献の格付け
調べなくても、井上さんが審議会の委員だとわかる、とおっしゃっていましたが、それは井上さんの解説のどのような点を根拠に判断されるのでしょうか。
shiraishi.iconなぜかの言語化は難しいですが、読めばわかります。しっかりした内容、様々な利害関係者の立場をよく知っていてバランスよく論点を網羅している、など。もちろん、審議会委員でなくとも論点を網羅できる人はいますが、例外です。
13条
新旧対照条文は、13条1号もしくは2号でしょうか。それとも32条2項でしょうか。
shiraishi.icon確かに、13条1号の「法令」もしくは13条2号の「その他これらに類するもの」に当たる、という見方もできるかもしれませんね。しかし、そうでないかもしれません。そのため、念のため、32条2項に当たるようにしておくのが安全かもしれません。32条2項も、「刊行物」の定義など、よくわからないところがありますが、同等のもの(例:この授業のScrapbox)であれば、実質的には問題ないと考えています。
文化庁の事務局が作成した審議会資料の一部をキャプチャしたものは、13条2号の「その他これらに類するもの」に当たるでしょうか。
shiraishi.icon上記と同じだと思いますが、32条2項のほうにさらに近づくような気がします。
32条
shiraishi.iconアカデミックマナーとしての「引用」と、著作権法32条にいう「引用」とは異なります。
改正後の35条
shiraishi.icon法律の条文からわかること、ガイドラインを見ればわかること、などあると思います。ガイドラインに書いてあっても、裁判所で争えば覆る場合もあることも、授業で説明したとおりですが、ガイドラインに書いてあることのなかには、裁判所まで行っても覆りそうにないこともあります。
今回の改正で、学校関係での公衆送信は(補償ありにした上で)広く認められることになりましたが、著作権者に許諾を得た場合は、その範囲内でより広く使用が認められるという認識でよいでしょうか?
shiraishi.icon
はい、改正後の35条1項の「その必要と認められる限度」や「ただし書」を超えて許諾をもらえば、広く使用が認められます。
ただ、それは、著作権法上は、そうである、にすぎません。例えば、仮に、井上さんが、「ITC-LMSなんて面倒ですからScrapboxにリンクを掲げてパスワードなしでダウンロードできるようにしてもいいですよ」と言ったとします。しかし、今度は、雑誌を出している出版社がよく思わない可能性があります。雑誌の会社が持っている「権利」は、たぶん、著作権でない「何か」です。これは、考えてみてください。そういうことまで言っているとキリがないので、今回の授業では省略しました。
雑誌より、書籍のほうが、何年経っても売れる可能性が高いので、こういう問題は生じやすくなると思います。
例えば先生がオンライン授業を行う時、著作権は先生の授業なのだから先生にあるため、今回の改正に関係なく行うことができるということなのですか。それとも、先生の授業の内容は部分的に他者の著作権に関わる(今回では井上先生の資料など)ため、その部分は、今回の改正が適用されるということなのでしょうか。「著作権」が属する人(権利者)が誰になるかはどのように決まるのですか。また、この改正のおかげで今オンライン授業ができているという認識でよろしいのでしょうか。
shiraishi.icon
白石「前提」を読んでください。
営利目的を除くとありますが、私立学校は営利に入るのでしょうか?
shiraishi.icon調べてみてください。「営利」という言葉の意味も、よく考えてみてください。
講義映像や資料を教師側が学生に送信することが認められるようになったということだと私は受け取ったのですが、学生同士が意見共有のために授業に関わる資料などを共有することは無許可無償でして良いと認められているのでしょうか?
shiraishi.icon条文とガイドラインを見てみてください。35条1項の、「授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には」に当たりますか?という問題。
著作権法第35条第1項で、改正によって「使用」という言葉が「利用」という言葉になっていましたが、これにはなにか意味があって変えられたのでしょうか?
shiraishi.iconよい質問だと思いますが、ここは、著作権法の専門家に訊いても、これという回答が返ってこない可能性もあります。取り敢えず、改正前の35条1項と2項でバラバラだったところ、改正後の35条1項でまとめて規定することにしたので文言も統一した、と理解しています。
今回の改正で権利制限が及ぶ範囲に、「予復習用の資料のメールでの配布」と書いてあるのが気になります。これは「メール」に限定された話なのでしょうか?ITCLMSのような形での資料の配布・共有に関しても、このうちに収まっているのでしょうか?
shiraishi.icon
これは例示です。公衆送信の概念はメールに限られるでしょうか。条文を見てみてください。35条1項をみるだけでも、「送信可能化」という言葉が出てきます。「送信可能化」の定義はどこにあるでしょうか(どこにあるかを白石「前提」で説明しています)。白石が井上解説をITC-LMSを掲げたことは、「送信可能化」に当たるのではないでしょうか。
担当官庁のパワポ資料より条文のほうが大事ということがわかる一例、ということになると思います。
利益を不当に害する、みたいな抽象的な内容の現実の問題に即した判断は、裁判所が行うものでしょうか。過去の判例に基づく判断なら、改正後初めての判断はどのようになされるのでしょうか
shiraishi.icon最終的には裁判所が行うけれども、それがいつになるか、そのような判決がでるかどうかも含め、わかりません。裁判所の判断は、誰かが争いを裁判所に持ち込まなければ、行われません。だから、35条ガイドラインのようなものが意味を持ってくるわけですね。まさに、裁判所でも担当官庁でもないところでルールが実質的には決まる、という一例かもしれません。(下記)
他の授業で、教科書の購入が遅れている学生に対して教科書の一部がファイルとして配布されたのですが、その際に、教科書全体をファイルで配布することは著作権の関係上できないと言われました。これは複製の量が多すぎることが原因なのでしょうか。
shiraishi.icon35条1項の「その必要と認められる限度」や「ただし書」の条件が関係していると思われます。
35条ガイドライン
35条の内容それ自体は上記
35条の各要件の意味は、何によって判断されるのでしょうか。
shiraishi.iconそこが、法律(文化庁)が決めず、「今後の解釈」に委ねられ、最終的には裁判所で決まるが、裁判所の判決が出るかどうかもわからないので少なくとも当面は「35条ガイドライン」が意味を持つ、という問題です。
関係資料に「ガイドライン」とあったが、ガイドライン自体にはどのような権威があるのか。裁判所の判例になっていないが、どれほどの効力があるのか。
shiraishi.icon上記の質問に対する答えも含め、授業中に説明しました。
補償金制度(改正によって新設)
無償と有償という話もありましたが、補償が必要でない権利制限と、補償が必要な権利制限ということでしょうか?
shiraishi.icon2段階ありますね。
権利制限のうち、私的使用(30条2項 → 104条の2以下)と授業目的(35条2項 → 104条の11以下)のみ、補償金が必要です。
その上で、授業目的の補償金が、令和2年度だけ、コロナ対応の緊急ということで、無償になっています。(正確にいうと、104条の13第1項にいう「額」を無償とする認可申請があり、「文化庁長官の認可」があった。)
今年が無償で行うということは権利者にお金を払うのは誰ですか?
shiraishi.icon無償というのは、教育機関を設置する者がSARTRASにお金を払わない、ということです。あとは、SARTRASと権利者(権利者団体)との関係でどうするかという問題であり、法律でわかる話ではなく、教育機関側としては関知しない・知らされもしない、という領域になります。
SARTRASはJASRACの様に著作物の利用者と権利者の媒介をしていると見てもよろしいでしょうか??
shiraishi.icon確かに、おっしゃる範囲では、同じですね。ただ、SARTRASは、法律で、権利侵害ではないが補償金を徴収する、ということになったものを徴収する。JASRACは、法律で、許諾がなければ権利侵害となる者について、許諾したり、許諾を受けていない者を見つけて法的措置をとったり、を仕事としています。その点で、違います。
指定管理団体に権利を委託していない権利者がいるのはどうしてですか?
shiraishi.icon教育機関や教育を担任する者・授業を受ける者にとって、世界中の権利者と連絡をとって許諾をもらうのが難しいのと同じように、それは指定管理団体であるSARTRASにとっても難しいと思います。想像してみてください。
SARTRASに参加していない権利者の著作物を授業で用いることはできますか。
shiraishi.icon上記の「頭の体操」へのヒント。
公衆送信補償金についての規定が35条と104条の11以下に分かれているのはなぜですか?
shiraishi.icon
たぶん、ですが、30条台は、使ってよいかどうかの問題に絞っているのではないでしょうか。ここに、104条の11以下の条を置くと、ゴタゴタして、何かよくて何がよくないか、すぐに全体を見わたすことが難しくなりますね。必要だけれどもゴタゴタしたものを脚注にするのと、同じ発想だと思います。
35条2項は、104条の11以下を見てね、という「頭出し」ですね。「30条2項 → 104条の2以下」も同様です。
改正前の35条
今回の改正で対面授業の予習資料の配布が権利制限の対象になるということは、4月28日以前に様々な授業でitc-lmsを用いて配られていた資料はなぜ配布できていたのでしょうか?これが改正附則4条(平成30年改正法附則4条)にあたるのでしょうか?
shiraishi.icon
この質問をいただいた後、条文の説明をしたのでわかったと思います(または、改正後の35条に関する上記の説明から)。
会場からの同時配信を行う場合には従前より補償金の支払いが免除されるとのことだが、それであれば対面での受講者の割合が相当少なくとも要件を満たすことになるのではないかと考えた。その場合、完全な配信とたいした差がない中不合理なのではないかと感じた。そもそも15年前の改正の時点では一般の学生が別々に受講できるという状況が想定されていなかったために規定されていない、というだけなのかもしれませんが。
shiraishi.icon
15年前の議論まで十分理解していないのですが、当時は想定していなかった、という可能性から、権利者からの反対もあったので取り敢えず狭い範囲で「権利制限」を設けた、という可能性まで、様々あり得るところと思います。
勉強・調査の進め方の一般論としては、そういう推測をしつつ、もし興味がさらにあれば、それに触れていそうな資料を探してみる、ということになると思います。
井上解説に出てくる難しい用語
P.4 ライセンス優先型について「適正なライセンス・スキームが〜権利制限に優先する」とは、どういう意味でしょうか。
shiraishi.iconこのあたりは難しい表現が続きますので、飛ばしていただいてもよいですが、これは、今回の改正案を作る前の議論を紹介しているのですね。もし、権利者が希望者にライセンスする準備をしていれば、改正後の35条のように権利を取り上げてしまう(「権利制限」する)のでなく、ライセンスを認めて権利者が利用者から直接お金を取れるようにしよう、という考え方です。
井上解説p5「補償金制度の枠外のライセンス・スキームを広くただし書の対象とすると、ロイヤル・スタッキング問題につながることにも留意する必要がある。」が、よくわかりませんでした。
shiraishi.icon難しい表現が続く部分ですね。
「補償金制度の枠外のライセンス・スキームを広くただし書の対象とすると」
権利者がいて、指定団体(SARTRAS)がいて、教育機関を設置する者がいて、教育を担任する者・授業を受ける者がいます。上記の記載は、「もし、権利者が、補償金制度によらずに自分でお金を集めます、という仕組みを作ったというだけで、35条1項ただし書に該当して補償金制度の対象でなくなってしまうこととすると」という意味です。
「ロイヤルティ・スタッキング」
権利者は、自分が徴収するロイヤルティ(=著作権利用料)は少額だから、と反論するかもしれません。しかし、権利者が少しずつでも徴収すると、それがチリツモになって、教育機関にとって高額になってしまう、という意味です。
井上解説5(2)の10〜11行目の「ワンストップサービスによる包括徴収のしくみ」とは具体的にどのような仕組みですか?
shiraishi.icon今回の補償金制度のことです。指定管理団体が「1個に限」るので、ワンストップ(1人に払えばおしまい)となります。
井上解説6(1)の15行目の「ライセンス・スキーム」とは何でしょうか?
shiraishi.icon
「ワンストップサービスによる包括徴収のしくみ」
104条の11第1項で「全国を通じて一個に限り」団体を指定するので、そこに補償金を払えばおしまいで、他から思わぬ権利者が出てきてお金を請求されたりしない、ということです。
「ライセンス・スキーム」
ライセンスとは、権利者が許諾することです。今回のような、1個の指定団体だけが補償金を請求できるという枠組みをとらない場合に、権利者と教育機関とがライセンス契約を結ぶ枠組み(スキーム)、ということです。権利者は世界中に無数にいるので、そのような枠組みは簡単には作れませんから、今回のように、著作権侵害には当たらないことにして、そのうえで1個の指定団体だけが補償金を請求できる、ということにしたのだと思います。
改正後の35条からはみ出る(ただし書とか)部分についてのライセンスが今後の話題となることも、もちろんあり得ると思います。
「オンライン授業と著作権法」以外の質問
井上由里子さんの資料の最初のページにある法改正を待っていたのでは間に合わないということはどういうことですか?
shiraishi.icon「柔軟な権利制限」に関する問題ですね。「オンライン授業と著作権法」とは直接関係ありません。興味があれば、下記などご覧ください。